コラム

教師は、教育改革について行けるのか

自分の子供に自主性や自発性を求める保護者は大変多いように思います。
自分の事なのだからもっとしっかりしてほしい、よく考えてほしい、など。
もちろん本人の性格などもあるかもしれませんが、
そういった人格形成に教育は大きく関連があるでしょう。
現在の日本の教育は集団授業の中で一斉に先生の言うことを鵜呑みにし、
その時間を黙って過ごす形態が主流です。
学習者そのものが疑問を持ち、正解のない問いに対して思考する事、そういった経験は学校教育の中にはなかなかありません。
そんな環境下の中で自発的に物事を考える子供が育つことは寧ろ珍しいことなのかもしれません。
そんな現状を危惧し、文部科学省が今後日本の教育を大きく変えていくことは、ご存知の方も多いでしょう。

今までなぜそういった教育だったのか。なぜ教育を変える必要があるのか。
戦後から復興が進み、ベビーブームの到来により激しい競争社会となりました。
誰もがよりよい大学への入学、よりよい会社でのよりよいポジションを目指し、激しい他者との競争の中を勝ち上がる事で生活が豊かになる、といった分かりやすい結果を得ることの出来る時代でした。
その思想は現在の日本の教育でも根強く残っており、
多くの教育機関がよりよい進路への最短ルートやテクニックのみの教育を提供しているのが現状です。

バブル時代の様に、産業が日本の中だけであればそれで良かったのかもしれません。
しかし、現代のグローバル化、ボーダレス化社会の中で、技術的な進歩により発生する創造物が非常に幅広くなっており、どこから何がやって来るのか分からない、今までの固定観念での仕事ぶりや指示待ちでは到底太刀打ちできない時代になっています。

現代的な課題を踏まえた上で文部科学省は以下の3点を育成すべき資質と能力の3つの柱として掲げています。

1.「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」
基礎的・基本的な知識・技能を着実に獲得しながら、既存の知識・技能と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより、知識・技能の定着を図るとともに、社会の様々な場面で活用できる知識・技能として体系化しながら身に付けていくこと。

2.「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」
問題を発見し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていくこと(問題発見・解決)や、情報を他者と共有しながら、対話や議論を通じて互いの多様な考え方の共通点や相違点を理解し、相手の考えに共感したり多様な考えを統合したりして、協力しながら問題を解決していく(協働的問題解決)ために必要な思考力・判断力・表現力。

3.「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」
多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するもの。この3つの柱を見た時に日本の教育が目指しているものが、どんな事が起こるか分からない不透明な社会の中で発生するであろう問題を思考し解決する能力の育成である事がわかります。

実際に国外では、知的学習だけではなくリーダーシップや協調性を育成するオルタナティブ教育が存在し、実施もされているので、日本がやろうとしている教育改革はもちろん現実に可能です。
しかし、今まで長年培ってきた知的学習がゴールだった教育から、更に発展させていく教育をするためには、まずは知的学習で満足してしまっている教師に今までの自身の在り方の大きな転換が求められるでしょう。
そして、最大の難関は、今までの何を教え、何が答えなのか、が明確であったカリキュラムから思考と問題解決を重視したカリキュラムに移行する際に、決まった答えのない問いに対してかける時間や、時にクリアにならないモヤモヤとした感情を受け入れなければならない状況にあると思われます。

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