コラム

人工知能AIと生きる時代に、人間が持つべき力とは。

現在、海外企業をはじめ日本企業でも、多様な人材を活用するダイバーシティの推進が積極的に行なわれています。異なる資質を尊重し共有することで、企業の優位性を創り上げることだとも言えますが、企業側がその職務に値する能力を持つどんな人も受け入れていくための環境整備に舵をきることで、逆に単に会社の指示を勤めてきただけの人材はお払い箱になる事と、捉えることもできるでしょう。さらに職場競争は人間だけでなく、今や人工知能AI(以下AIとする)の存在も大きな注目株になっています。

人工知能、またはAIという言葉自体は、すでに馴染みのあるものとなり、iPhoneに搭載されているSiriを始め、お掃除ロボットのルンバなど、AIは既に、生活に大変密着して来ました。ところで、進んだAIの一例として、人工知能ソーシャルロボットを開発しているAKAによる英会話ロボットmusio(ミュージオ)があります。非英語圏の子供たちのスピーキングの英語補助教材ロボットとして、2015年に発表されていますが、このmusio(ミュージオ)は、注意すべき特徴を人間が読み込ませたデータの中で学習する機械学習という「特化型人工知能」で成立しています。

これに対し2017年、1月に開催された第1回ロボテックスでは「汎用人工知能」をもつ「ルナ」が日本ルナウェアAIテクノロジーズから発表されています。「汎用人工知能」とは、異なる領域における複数の問題に対してアプローチができる人工知能のことを指します。「ルナ」は身近な存在として相談相手になり、ただ話を聞くだけでなく、法律、医学、人間同士の関係性など、複数の領域を理解しているため、それらを踏まえた回答もできるようになっています。また「ルナ」は、実証実験として、ニューヨークの小学校で物理学を子供に教えているそうです。

こういった時代に、子供たちはAIと当たり前に生活をしていき、社会でも共に働いていく事になります。今後、技術が更に発達し、AIに汎用性を持たせることで人間の能力を超える時代がやって来ると言われています。AIが発達することによって奪われる職種があることは事実で、その変化を危惧する声もありますが、新たに生まれる職種があることはもちろん、人間の方が優位性のある職種も発生するでしょう。そもそもAIが存在しようがしまいが競争は存在し、相手が何であろうと、自分に対する問題や課題を発見し、必要なスキルを身に付け、さらにスキルアップをしながら生きていく事に変わりはありません。

「まだ習っていない漢字だから、書けない。」「やり方を習っていないから、解けない。」という生徒の声。教わっていないから、できないままでも平気でいる子供達は少なくありません。いっぽうで、生徒の解答は間違っていないにも関わらず、今回のテストの範囲ではその公式を教えていないため不適当「×」とする教師。生徒側の姿勢にも、教師側のアプローチにも問題はあるでしょう。しかし、これからの混沌とした社会において、教わっていないから知らないまま、できないままでも平気でいる姿勢の人は、まるで出来の悪いAIのようではないでしょうか。

「出来ない人は、自分だけじゃないから」と、誰かと自分を比較・同調し、安心する時代は終わりました。過去の前例を単純に適用したり、言われた事をこなすだけの能力は、必要ない時代になってきています。未知なる問題に対し、発見・分析・解決といった論理的な「思考」を持つことや、情報発信していく能力は、AI時代を生きる人間にとって大変重要な資質となることでしょう。

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