コラム

考える葦であり続けるために

何か分からないことがあるとき、皆さんは、その問題解決に向けてどう取り組まれるでしょうか。お手元の電子辞書を使って調べるのも1つの解決法ですが、現代ではweb検索機能を使われる方が多いでしょう。

検索機能を使うことは、求める解答や結果を早く見つけることにおいて大変効果があります。インターネット環境が整った現代において、自分の求めるものを探し出す検索能力も、仕事のスキルの1つとして重要視されています。しかしながら、検索結果をそのまま提示する人と、自分で考え試行錯誤しながら、検索結果も1つの選択肢として捉え、結果として検索結果を解答として提示する人とでは、同じ解答結果でも、見えない違いを含むことになります。

2017年10月末、アメリカIBM社が人工知能AI「ワトソン」を無料提供することを発表しました。この人工知能は「Artificial Intelligence(人工知能)」ではなく「Augmented Intelligence (拡張知能)」として人間の知識を拡張し増強するものと定義付けされており、「会話」「翻訳」「文章を基にした性格分析」「対話を通じた意思決定支援」「文章を基に感情や社交性を判断」といった機能をベースとしています。ワトソンのもつ「対話を通じた意思決定支援」の機能は、人間の根幹に触れているように感じます。

我々が人として存在する為には、自己認識能力が不可欠です。自己認識とは、周りから見た自分がどんな人物であるかという外面的なもの。そして、自分の価値観、情熱、願望についての内省的な理解、といった内面的なもの。この2つによって成り立っています。何か行動を起こす際、必ずその動機が存在します。自分の持つ動機や願望、情熱を理解するということは、自分の行動に対する自信となり、物事を継続していく力へとつながる為、大変重要です。

自分のことは結局自分で選択し、決断をせねばなりません。その過程や経験が知恵となり、自信へと繋がります。今後、人工知能AI「ワトソン」の無料提供により、目的地などのハード面に対する解答だけではなく、AIが人間の抱える悩み事や考え事などのソフト面に対して、適切な解答を提示してくれることになるでしょう。それは、自信をもつ過程、ある種、人間らしさの一部を「ワトソン」に任せることになります。AIと共存していく世界の中で、AIの解答を選択肢の一つとして扱う人間でいられるのか。それとも、AIの解答を鵜呑みにし、自分の人生をAIの駒のように過ごしていくのか。自分が人間でありたいと思うのであれば、今以上に経験や実践を重ね、自分への理解を深めていく必要性を強く感じます。

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