コラム

成功の秘訣とは

戦後、何もなかった状況から、技術者や職人と言われる人達のものづくり産業によって、たったの15年で「ものづくり大国ニッポン」と言われるほどに、日本は小国ながらも世界に認められる立派な一国となりました。職人企業の事例として有名な岡野工業は、従業員3人の小さな町工場にもかかわらず、微少針の世界ではシェア100%を誇ります。赤ちゃんや糖尿病患者のインシュリン注射などに使われ、わずか3ミクロンの「痛くない注射針」を生産する企業です。この世界に誇る技術を持った岡野工業はどのようにしてここまでの業績を残せたのでしょうか。

岡野工業は30件もの特許を取得しており、主に大手自動車メーカーの部品製造を受注していましたが、約13年前に大手医療メーカーからの依頼により、誰にも出来ない、と言われたこの注射針を発明しました。かつて、社長である岡野氏が若いころに作った鈴の金型作りにおいて、失敗に失敗を重ねながらも、1年間、この金型作りと向き合い、いまだに他にできる人が誰もいない技術を岡野氏は残したのです。そして、その経験を活かし「痛くない注射針」を発明し、他の誰もが真似ることの出来ないものづくりを成し遂げました。

何か新しいものを生むためには、想像以上の試行錯誤と失敗がつきまといます。しかし私達は、そういった失敗の中から多くのことを学び取る事ができます。その1つ1つの機会を大事に自分の物にしていけるかどうか、その失敗を好機と思えるかどうかは、本人の考え方によるところが大きいでしょう。目先の結果の為に失敗が許されず、結局は成功例に倣って物事を進めなければならない機会も多くあります。言い換えれば、既存のものに倣っていけばある意味成功している、と感じる事もあります。もちろん、その経験も糧となるでしょうが、特に様々な技術が飛び交っていくこれからの時代の中では、成功事例に倣いながら生きていく事の方が少ないように思います。

岡野氏は「注射針の他にも、誰も成し遂げられない、不可能な仕事を多くこなす中で、どんなに難しい仕事でも、一度も限界と感じたことはない。」そして、唯一の技術を残してこれた秘訣は「たとえ、気の遠くなるような失敗を重ねても、完成するまで絶対に諦めないこと。」と語っています。岡野氏のこれまでの成功は、知識や技術だけではなく、とにかく挑戦する事と、失敗を恐れず自分を信じ突き進んでいく勇気と信念にあったようです。

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